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4 Tage im Mai 五月の4日間

ドイツ・ロシア映画 (2011)

実話に基づき、ドイツが無条件降伏した日に赤軍同士が戦い、その一方をドイツ軍が助けるという奇妙な事件を描いた映画。主役が13歳の少年というのも、戦争映画としてはきわめて珍しい。この映画に関して、監督・脚本・製作を兼ねるドイツ人のアヒム・フォン・ボリエス(Achim von Borries)へのインタビューと、赤軍の大尉を演じるポーランド人の名優アレクセイ・グシュコブ(Aleksej Guskov)へのインタビューが、それぞれ2つずつあり、それに準じて以下の解説を作成した。グシュコブは、「私が最初にこの話を聞いたのは、2005年のカーラジオでだった」と述べている。そして、その話に感動した彼は、実際に何が起きたのかを調べ、3年がかりで脚本を書き上げた。一方、監督によれば、50年の時を経て〔舞台となったリューゲン(Rügen)島は、ソ連に占領され、東ドイツになったため、この醜聞は封印された〕、この話が公表されると、多くの会社が映画化を考えた。監督と親交のあったグシュコブは、ロシア側の視点から脚本を書いたので、監督に、ドイツ側からの視点で書き直すよう依頼。監督は、脚本が兵士の視点で書かれていたので、それを全面的に改め、1人の少年を創造し、その視点で映画化すれば 観客がより感情移入できると考えた。主役を務めるはずだったグシュコブには、別に主役ができてしまったことの了解を求め、快諾された。このストーリーの発端となった若い女性への赤軍のレイプに絡め、“年上の女性に対する少年の憧れ” を脚本に組み入れたのも、少年ピーターを主人公にしたためだ。こうして完成した映画では、ピーターは、孤児になってから伯母の男爵夫人に引き取られ、夫人が運営する孤児院の少女達と、それをサポートする大人の女性達と暮らしてきた。それが、急に荒々しい男の兵士達と立ち向かわざるを得なくなり、戸惑い、中には間違ったこともする。しかし、最後には、グシュコブ演じる “父のような” 赤軍大尉や、残留ドイツ軍兵士らの犠牲により、少女達とともに救われる。映画は、救う側ではなく、救われる側に焦点を当てたことにより、より感動的になった。

ナチス・ドイツの無条件降伏の4日前、すでに北ドイツではドイツ軍が降伏し、孤児のピーターが引き取られたバルト海のリューゲン島でも、赤軍が襲ってくるということで、島民がデンマークに大量脱出している最中だった。島に駐留していたドイツ軍の最高責任者の中佐も、デンマークに行き、イギリス軍に降伏することを考えていた。そこに、突然、赤軍の偵察隊が現われる。いつも子供扱いされて悔しく思っていたピーターは、射殺されたドイツ兵から短機関銃MP40、軍服、軍帽を奪い、島を守るつもりで歩いているところを赤軍の偵察隊に見つかり、男爵夫人の伯母の城館に逃げ帰るが、逆に、それは、偵察隊を城館に侵入させる結果となった。ピーターは、偵察隊により城館で拘束され、最初は、“隊員を撃って怪我をさせた” と疑われ、戦争捕虜として扱われるが、赤軍の兵士を撃った弾がMP40と違っていたため、今度は、子供扱いされる。ピーターは、島に残っている100名ほどのドイツ兵に、何とか城館を襲ってもらい〔赤軍の偵察隊で動けるのは7名しかいない〕、ロシア人なんか蹴散らして欲しいのだが、ドイツ軍の中佐は、戦争は終わったと言い、デンマークに渡って投降することしか考えていない。一方、赤軍偵察隊の隊長の大尉は、これまで、上官に対する直言のため2度も処罰を受けた “高潔” な人物で、妻も、息子と娘も戦争で亡くしていた。彼にとって、ピーターは、失った息子を思わせる存在に変わっていく。そして、ピーターが、赤軍本隊によって捕虜にされないよう、身につけていた軍服を焼き、長ズボンを半ズボンに切り詰め、“小さな子供” らしく見せる。また、ピーターが慕っている年上の少女アナを、自分の手荒な部下から助けたりもする。ピーターが、ドイツ軍を助けるような情報を敵に流した時ですら、“ピーターの立場なら、そうしただろう” と許してやる。しかし、無条件降伏の日、ようやく現われた赤軍本隊の軽薄で酔っ払いの少佐は、アナをレイプしようとして、大尉に力で阻止され、腹いせに部下に城館の攻撃を命じる。大尉は、城館に匿われていた孤児の少女達を地下室に避難させ、機関銃で戦い、一次攻撃は何とか退ける。その間に、ピーターは、自己判断でドイツ軍に救援を頼みに行く。戦う気のなかった中佐も、ドイツ人の子供達を赤軍から救出する必要性を認め、大尉を助けに行く。ピーターは、安全な地下室に監禁され、その間に、赤軍本隊の戦車を交えた二次攻撃が行われ、ドイツ中佐は死亡、赤軍大尉は重傷を負うが、何とか撃退に成功する。ピーターと少女達、アナを含めたお手伝いと、男爵夫人は、僅かな停戦の隙に舟まで連れて行かれ、無事、デンマーク行きの船に乗り移ることができた。後に残された人達に、逃げ場はどこにもない。映画の中で、ピーターと大尉の “擬似的な親子関係” は重要なテーマだが〔息子を戦争で亡くした大尉が、ピーターの中に 昔の息子を感じ、守ってやろうとする 「父性愛」 と、戦争で父を亡くしたピーターが、大尉の中に見た 父のように信頼できる人への 「思慕感」〕、大尉を見るピーターに笑顔はない。下の写真は、映画の中では出てこないが、2人の関係をよく現わしていると思うので、付け加えることにした。
     

パーヴェル・ウェンツェル(Pavel Wenzel)は、1998年3月15日生まれ。映画の設定は13歳だが、撮影時は12歳。赤毛で緑色の瞳の痩せて小柄な少年。父はドイツ人、母はベラルーシ(白ロシア)人。だから、ドイツ語とロシア語のバイリンガル。ピーターの役を得るための必須条件だ。コットブス(Cottbus、ポーランド国境に近い町)の子供劇場に出ただけで、いきなり映画の主役に抜擢された。名優アレクセイ・グシュコブが人徳豊かな大尉を演じて存在感を発揮しているので、映画の世帯骨はグシュコブが支えてくれている。パーヴェルが演じるピーターは一種の進行役だが、“早くイギリスに降伏したい” ドイツ将校を何とか鼓舞しようと頑張るところや、大尉を擬似的な父親と感じるようになる部分では、なかなかの演技力を見せる。戦争という厳しいテーマなので、笑顔はない。この作品の後は、3本のショートムービーに出ているだけだが、そのうち、この映画と同年の2011年に完成したわずか7分の作品『Edeltraud und Theodor』の中で、悪戯小僧を演じているので、笑顔が見られる。その映像を紹介しておこう。


あらすじ

映画の冒頭、「Nach einer wahren Begebenheit(事実に基づいて)」と表示され、すぐに、1隻の小型船に向かって手漕ぎの大型ボートが近づいていく姿が映される。そして、「ドイツ バルト海沿岸/1945年5月8日〔ドイツが降伏した日〕」と表示される。背後には、6、7名の兵士がいる砂浜と、その向こうの森の中に煙の上がっている立派な建物が見える。カメラがボートの上を映すと、そこに乗っているほとんどは小さな女の子。男の子は1人だけ(1枚目の写真)。男の子の顔がクローズアップされる(2枚目の写真)。後から、彼が、この映画の主人公ピーターであることがわかるが、この時点では、状況は一切分からない。
 

場面は、いきなり切り替わり、ピーターが建物の横に置いてあった自転車に乗る。そして、「4日前」と表示される。ということは、冒頭のシーンは、4日後ということになる。BBCの英語音声が流れる。5月4日金曜日朝6時10分、エルベ川のモントゴメリー元帥の戦略本部からの情報として、北西ドイツ、オランダ国境にまたがるフリースラント諸島、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にあるヘルゴラント島、そして、デンマークのドイツ軍が降伏したことを知らせるニュースだ〔ヒットラーの自殺(4月30日)後、各地のドイツ軍は次々と降伏していった〕。ピーターは、海岸まで来て様子を伺う。海岸にいる人々のほとんどは民間人。沖合いに、その人達を遠いデンマークまで連れて行く小型船が停泊している(1枚目の写真)。ピーターは、砂浜まで行き、中に混じっていた3人のドイツ兵に話しかける。「ロシア兵が来るよ! 奴らが戦ってるのを見たんだ。南の方角だよ」(1枚目の写真)(ドイツ語は青色)。「小隊長が、僕に、海岸を見て来いって」。ピーターもよく知っている、17・18歳の少年兵は、「ほお、そう言ったのか?」とバカにしたように訊く。「そうだよ」。「その小隊長は、逃げちまったぞ。腰抜け野郎だ」。「ねえハンス、僕にもカービン銃、1つ持たせてくれない?」。ハンスは、年下のピーターを見下すように、「あっち行けよ。邪魔だ」と追い払う。桟橋で、人々をボートに乗せている男が、ピーターに声をかける。「おい、坊や、館から来たんだろ? 男爵夫人と子供達はどんなだ? 女の子は何人くらいいる?」。「あんまり多くないよ」。「夫人に伝えてくれ。船は、可能な限りいつでもデンマークに行きますって」。「僕が守るよ」(3枚目の写真)。ピーターは、城館で唯一の男性なので、自分で守る気でいる。解説で述べたように、この実話はリューゲン(Rügen)島で起きていて、映画の撮影も島で行われている。ということは、1枚目の写真で海の向こうに見えるのは、2-3キロの幅の海峡を隔てて接しているドイツ本土となる。だから、沖合いの小型船は、対岸の本土に行くのではなく、島から直線距離で90キロ北西にあるデンマーク(ファルスター島/コペンハーゲンと結ばれている)に向かうのであろう。さらに付け加えれば、ピーターのいる城館の撮影は、1710年に造られたボートカンプ城(Herrenhaus Bothkamp)で行われた〔城は内陸部にあり、海沿いではない〕。その頃、城館では、ピーターの姿がどこにもないので、男爵夫人が心配している。城館には、慈善で世話している孤児の女の子達が一握りと、それをサポートする数名の女性しかいない。
  

ピーターは、伯母に心配をかけていることなど考えもせず、赤軍が来たら戦おうと、林の中で、ナイフを木に切りつけている(戦争ごっこの域を出ていない)。すると、林の向こうにドイツ兵2人が姿を現し、同時に背後から、より多くの赤軍が現われたので、急いで草むらの斜面に隠れる(1枚目の写真)。赤軍兵士は8人。赤軍はドイツ兵に見つけ、1人を射殺する〔赤軍兵士1人も、撃たれて重傷を負う〕。その銃撃の音に、桟橋では人々が逃げまどう。ピーターは、その間、耳を押さえて縮こまっていたが、しばらくして桟橋がどうなったか、そっと見に行く(2枚目の写真)。さっきまでボートに乗ろうとしていた人々の姿はどこにもない。逃げ遅れたドイツ兵が1人走って逃げ出し、背後から射殺される。赤軍がいなくなると、ピーターは砂浜に出て行く。ピーターは、殺されたドイツ兵(3枚目の写真、矢印)から、短機関銃MP40、兵卒の帽子と軍服(上着)を拝借する。
  

そして、軍服姿で歩いていると、赤軍に見つかり、「止まれ!」と命令されるが(1枚目の写真)、ピーターは城館に向かって逃げる。赤軍は、ピーターを追って城館の敷地内に侵入する。ピーターは、銃を構えて納屋に隠れる(2枚目の写真)。納屋には、16・17歳くらいのお手伝いさんアナがいて、「ピーター」と声をかける。「アナ、隠れるんだ」。「何してるの?」。「ロシア兵が来たんだ! 隠れて」。アナは納屋の奥に隠れる。城館の正面に来た赤軍の大尉は、部下に銃を構えさせ、「私は赤軍の将校だ。手を上げて出て来い」と命令する。すると、扉が開き、男爵夫人が姿を見せる。大尉:「兵士がどこに隠れたか訊け」。「兵士。ファシスト。どこ?」。夫人:「(ロシア語を)話せますよ。ここは、子供達の家。女性と女の子だけ。兵士などいない」。「全員、外に出せ。残った者は撃つ」。「私は、マリン・フォン・レヴェノフ男爵夫人。私が保証します。子供達、怯えていますよ」。「全員、外に出せ!」。夫人は、仕方なく、全員外に出させる(3枚目の写真)。
  

それを見ていたピーターは、MP40を構えて納屋から出ると(1枚目の写真)、「ここから出て行け!」と叫ぶ。相手が、声変わり前の子供だと分かると、大尉は、部下に「撃つな」と命じる。男爵夫人も、「傷付けないで。彼は、兵士じゃない。私の甥よ」と頼む(2枚目の写真)。しかし、ピーターは臆することなく、大尉を睨んで銃を向ける。大尉はゆっくりとピーターに近づいて行くと、MP40を素早く奪い、「お前1人か? どこの部隊から来た?」と詰問する。夫人は、「彼は、まだ子供よ。まだ13歳。子供ですよ」と庇う。大尉:「短機関銃を持って? 軍服を着て?」。ピーターも意地で、「僕、兵士だ」と言うが、夫人から、「お黙り」と叱られる。大尉が「もう一度言ってみろ」と言い、ピーターは、「僕、兵士だ」とくり返す(3枚目の写真)。「どの連隊だ?」。「第八歩兵連隊」。軍曹が、「第八歩兵連隊だと? このファシストのいたずら小僧め」と言ってピーターを殴り、気絶させる。そして、暗転、映画の題名が表示される。因みに、ピーターはロシア語を普通に話すことができる。
  

戦車4輌以上を含む赤軍の本隊がやってきて(1枚目の写真)、城館に立ち寄る。意識が戻ったピーターは、大尉の元に連れて行かれる。その頃、大尉は、本隊を指揮する少佐と話している〔少佐は、まだ若くて生意気で、後から、完全なロクデナシだと分かる〕。少佐:「大尉、君は、ここで連中と話でもしてろ」。大尉:「ここは、孤児院ですよ」。「売春宿だったらよかったか? この場所は抜群だ。どこからドイツ兵が来ても、君の鼻先を通らんわけにはいかん。見つけ次第 捕虜にしろ。いいな? 勝手な行動は許さん」。「なら、歩兵、砲兵と戦車で支援して下さい」。「支援が要るだと? 俺に逆らう気か? また、軍事法廷にかけられたいのか?」(2枚目の写真)〔大尉は既に二度法廷にかけられた〕。こうして、大尉は、僅か8人という、“大尉としては異例の少人数” の部隊で、問答無用の任務を押し付けられる。その間、ピーターは、大尉の通信係に預けられている。彼はネズミをポケットに入れて可愛がっている。大尉が通信係に命令を下している間、少佐は、ピーターを変な顔で見るが、幸い、何も言わない(3枚目の写真)。
  

大尉は、空のベッドが並んでいる部屋にピーターを連れて行く。「ここで寝ていた連中はどこだ?」。返事がないので、「訊かれたら すぐ答えろ」と叱る。「出て行きました、大尉」。「どこへ?」。「迎えに来て、連れて行かれました」(1枚目の写真)「赤軍が… 戦線が近づいた時」。大尉が次に行ったのはピーターの部屋。玩具の兵隊や戦車が置いてある。「なぜ、ロシア語が話せる?」。「伯母から教えてもらいました。サンクト・ペテルブルグ出身なんです」〔ということは男爵夫人はロシア人ということになる。どこにも書かれていないが、1917年の二月革命で帝政ロシアが崩壊した時、夫を殺され、ドイツに亡命したのであろう。さらに、ピーターの父はドイツ軍の将校なので、恐らくドイツ人。「伯母」と呼んでいるので、母がロシア系で男爵夫人の妹だった可能性が高い〕。大尉は、ピーターの部屋にあったナイフを調べる。「他に武器はあるか?」(2枚目の写真)。ピーターは首を横に振る。大尉が、念のために引き出しを開けると、そこには写真が何枚か入っていた(3枚目の写真、矢印)。1枚目は、将校の写真。「父さんか?」。頷く。戦車の上で撮った写真の裏にはクスルク〔モスクワの南450キロ〕と書いてある。両軍の戦車6000輌が戦ったとされる 有名な “クルスク戦車戦”(1943年7-8月)だ。「生きてるか?」。ピーターは二度訊かれて首を横に振る。「なら、もっと抜け目なくなれ」。次に母の写真がある。「母さんか?」。「返して下さい。お願い、どうか返して」。
  

この、言葉の時、カメラは、窓の外の光景を写している。城館の中庭では、少佐の部隊が出発を始めていたが、その際、孤児院で働いていた若い女性を、兵士達がトラックに無理矢理乗せようとしている(1枚目の写真、矢印。後ろでは、娘の母親(?)が、必死で行かせまいとしている)。娘がレイプされるのは目に見えているが、そのおぞましい様子を納屋から見ている女性がもう一人いた(2枚目の写真)。それは、ピーターが「隠れて」と言ったアナだった。外では、1人の砲兵が少佐に、「壊れた大砲、どうしましょう?」と訊いている。「ここに置いていけ」。そして、ジープに乗ると、副官に「シュナップス〔スカンジナビア産の蒸留酒〕は持ってきたか?」と訊く。この自分勝手なロクデナシ少佐は、酔っ払うことしか考えていない。壊れた大砲を残された大尉が、「こんな物どうするんです?」と聞いても、「君らは歩兵だろう」というだけ〔歩兵だから、歩兵用の小型砲くらい何とかしろという意味か?〕。何れにせよ、邪魔者はいなくなり、城館は再び大尉の8人だけになる〔うち1人は、ドイツ兵との交戦の時に負傷して動けない〕
  

放置されていった大砲を調べた大尉は、「1回発射したら、砲身が壊れる」と判断する。その後、男爵夫人と話し合うが、その中で、拉致された女性のことが話題になる。大尉は、①拉致を見ていない、②自分は普通の大尉、③自分の指揮下にある7人の兵士にしか責任はないと、ある意味、責任を回避する。「甥はどうなるの?」との問いに対しては、「戦争捕虜として対処する」。「何もしてませんよ」。「私の兵士を撃った」。その後、撃たれた兵士の弾を取り出す荒っぽい “手術” が、男爵夫人によって行われる。その間、撃った可能性のあるピーターは、軍曹に首根っこを押えられて、隣の部屋で待機(1枚目の写真)。右腿に入っていた弾が麻酔なしで取り出されると、大尉はそれを軍曹に見せに行く。それを見た軍曹は「小銃の弾です」と言う(2枚目の写真、矢印は摘出した弾丸)。「彼のは?」。「短機関銃です」。これで、ピーターの疑いは晴れ、捕虜ではなくなった。ピーターは、雑用係となり、井戸で汲んだ水を運ぶ途中、納屋に寄る。「アナ、僕だよ」。「フェラが連れてかれた」。「君も、ここから逃げないと。できるだけ早く」(3枚目の写真)。「一人にしないで」。「しないよ。約束する」。ピーターは納屋から出ようとする。「ピーター」。「僕、水を運ばないと」。
  

海岸の様子を偵察に行った兵士が走って戻ってきて、「ドイツ兵が! 海岸に!」と慌てて報告する。大尉が双眼鏡で見ると、そこには100名弱のドイツ兵が集まって来ていた(1枚目の写真)。「服装からして、いろいろな部隊が混ざっているな。我々には、まだ気付いていない」。「逃げる気ですね」。その時、通信係が来て、「大尉、奴ら、援軍を送らない気です」と報告する。大尉は自ら無線を取ると、「海岸はドイツ兵でいっぱいです。戦車の応援が必要です。私達は8人で、1人は負傷しています」と説明する。その話を、下の階から階段で近づいたピーターが聞いている(2枚目の写真)。その後の通信は、大尉が、「分かりました、少佐」と言うシーンで終わり(3枚目の写真)、何を言われたのかは分からない。ただ、その後、大尉が兵士達に「戦車なしで、あいつらを捕虜にせよとの命令だ」と話すので、少佐が敢えて意地悪をしていることが分かる。軍曹は、「我々の10倍以上います」と、危惧する。大尉は、「5人一緒に来い。通訳として子供も連れて行く」と言う。
  

5人が城館の門まで行くと、ドイツ軍の中尉が、中佐の命を受けて白い布を振る(1枚目の写真、矢印。赤軍側は大尉と通訳ピーター、ドイツ側は中佐と中尉が海岸と門を結ぶ道の中間点まで進み出る。真っ先に敬礼したのが中佐、次いで、中尉、それを見たピーター、最後に短く赤軍の大尉。大尉は、ロシア語で話し、ピーターが、「戦争は終わった。降伏すれば命は保証する」とドイツ語に直す。中佐:「我々は命令を受けて、デンマークに行くため この海岸まで来た。我々はそこで降伏する。我々はもう戦わない」。ピーターが、「デンマークで降伏を…」を言いかけると(2枚目の写真)、大尉はそれを無視し、「どの国に降伏する気だ? アメリカか?」と訊く。このロシア語は通訳の必要がないので、中佐は即座に「イングランドだ」と答えるが、これも通訳の必要なし。次の大尉の言葉は、「我々に降伏しろ」。「我々に降伏しろ」(ピーターの訳)。中佐は、中尉に、「このバカ、何人いると思う?」と訊く。大尉は「訳せ」と言うがピーターは黙っている。大尉は、「降伏すれば命は保証する」と くり返す。「降伏すれば…」(訳)。中佐は、訳を最後まで聞かず、「何かを保証できる立場にあるのは私だけだ。君には、何人の兵士がいる? 20人か?」と見下す。ピーターは、同じドイツ人なので、「8」とこっそり秘密を漏らす。大尉がその言葉を理解したかどうかは分からない。ピーターを信用した中佐は、「彼に尋ねろ。今すぐ死にたいのかと」。「今すぐ死にたいのか?」(訳)(3枚目の写真)、大尉は、「君ら全員、戦争捕虜だ」と強硬姿勢を崩さない。「全員、戦争捕虜だ」(訳)。それを聞いた中尉は、「狂ってる」と呆れ、中佐は、「さっき君に言ったように、我々はもう戦わんし、イギリスに降伏する。撤収するのに20分の猶予をやる。さもないと攻撃するぞ」と言うと、返事を聞かず、敬礼だけして去って行く。ピーターが、「撤収するのに…」と訳そうとすると、察しがついた大尉は、「言わんでも分かった」と遮る。
  

大尉は、中庭に放置された大砲を門の外に移動させる。部下は、「なぜ、移動させるんです? 撃てたとしても、たった1発なんですよ」と訊く。大尉は、「だから、決定的な1発にしないといかん」と答える。ドイツ軍の方も、大砲が用意されたことを双眼鏡で見ている〔1発しか撃てないとは知らない〕。大尉が見ていると、デンマークまでドイツ軍を運ぶための小型船が近づいてくる〔1回で全員を乗せるのは無理で数回の往復が必要〕。大尉:「海岸までの距離は?」。「約500メートルです」。「なら、船までは1200メートルくらいだな」。そして、“最後の1発” は船めがけて発射される(1枚目の写真)。大砲の弾は、船の手前に落下、水しぶきが上がる(2枚目の写真、矢印)。船長は、何度も砲撃を受ければ撃沈される恐れがあるので、デンマークに引き返す。それを見た中佐は、退去の道が断たれたことを悟る(3枚目の写真)〔中佐も、大砲がもう使えないとは知らない。船がくればまた撃たれると考える〕。大尉は、さらに、少女達を呼んできて大砲の上に登らせる。それを見た中佐は、「あれが、奴らの保険なんだ」と吐き捨てるように言う。中尉:「中佐殿、敵は8人です」。「建物の中は子供達でいっぱいだ〔これで、赤軍への攻撃は放棄せざるを得なくなった〕。中佐:「他に、船に乗り込めるような場所はないか?」。中尉:「ここから南に4キロの場所が、可能かもしれません。だが、そちらにもロシア兵がいます。ロシア兵でいっぱいですから」。「いいか、我々は、ここから立ち去らねばならんのだ」。
  

ピーターが納屋をこっそり訪れ、アナに食べ物を渡す。「あと、一晩ここで頑張るんだ。浜辺にはドイツ兵がいっぱいいる。きっと僕らを助けてくれる」(1枚目の写真)。ピーターは、むさぼるように食べているアナのスカートをちょっぴりめくって中を覗こうとするが(2枚目の写真、矢印)、アナは ピーターの手を取ってどける。その時、納屋の扉が開く音が聞こえる。2人は顔を見合わせる。誰かが、2人のいる納屋の中2階への梯子を登ってくる。中2階に来たのは大尉だった。ピーターは、大尉に飛びかかって行き、1階の藁の山の上に一緒に落ちる。暴れるピーターを押えようとした大尉は、覗きに来たアナを見つけてしまう。「君が戦ってたのは、あの娘(こ)のためなのか? 気に入った」(3枚目の写真)〔なぜ隠れていないで、バカみたいに、覗きに来たのだろう?〕。大尉はピーターの気概に惹かれたようだが、アナは城館に連れて行かれる。男爵夫人は、「どこにいたか知らなかったわ。その娘(こ)は、私達の一員で、ここで働いています」と説明する。「まだ他に隠している者は? 家捜しさせる気か?」。「誰もいない」。夫人は、アナが、連れ去られた娘の二の舞にならないよう、髪を短くカットする。
  

その夜、城館の双塔の片側から、光のモールス信号が発信される(1枚目の写真)。光を出して、ドイツ軍に救いを求めていたのはピーターだった(2枚目の写真)。中佐:「あれは何だ?」。中尉:「援助要請です。中佐殿、率直に申し上げてよろしいですか? なぜ攻撃しないのです?」(3枚目の写真、矢印は光の信号)。「何が言いたいんだ、中尉?」。「我々は100人ほどいますから、8から10の小隊を編成して、戦うことができます。失礼ながら、我々は まだ軍隊であります」。「2時間だ。2時間したら船が来る。それで、生きられる」。
  

城館では、長いテーブルの両側に孤児と使用人が立ち、夫人が食前の祈りを唱えている。全員が席につくと、夫人はフランス語で「Bon appétit(召し上がれ)」と言う。この中にアナはいない。アナは、兵士達の食事の世話をさせられている。その中に、今回の任務で初めて大尉の小隊に加わったセデフという兵士がいる。彼は、アナが気に入り、席を立つと、「どうした? 男の子みたいになっちまって」と声をかける〔アナはロシア語が分からない〕。反応がないので、「アナの顎に手を伸ばし、「俺を見ろ。怖がるな」と迫る(1枚目の写真)。それを見たピーターは気が気でない(2枚目の写真)。セデフは無理矢理アナを抱こうとする。アナがセデフを突き放すと同時に、アナを守ろうとピーターが立ち上がる。それを止めたのは大尉。左手でピーターを押えつつ、右手でコップを上げ(3枚目の写真、黄色の矢印はコップ、赤の矢印はピーターの襟を持った手)、テーブルに叩きつけると、セデフに水を注ぐよう命じる。そして、セデフが注ぎ終わると、「座って、食べろ」と命じる。「結構です。もう食べました」。「これは命令だ」。ふてぶてしく席についたセデフを含め、全員に、大尉は「この娘は、俺のものだ」と宣言する。
  

ベッドに入ったピーターの脚には、空き缶が3つついた紐が結びつけられる。「これで、夜の間に逃げられんぞ」。セデフが、兵士の1人に、「なぜ、大尉を『ドラゴン』って呼ぶんだ?」と尋ねる。「2度首を切られたが、その度に生き返ったからだ。君は、この隊に入って新しいから、何も分かっちゃいない。我々にとって、ドラゴンは指揮官であり、親爺であり、兄貴なんだ。だから、我々には一つのルールがある。大尉に命じられたら、速やかに言われた通りに実行する。全て巧くいく」。セデフは、「下らんルールだ。戦争が終われば 無意味だ」と言い、ベッドにふんぞり返る。その言葉を聞いて怒った軍曹は、ベッドの縁に掛けた足をなぎ払うと、セデフの前に立ちはだかり、「黙れ、口に気をつけろ。ドラゴンはもう十分に犠牲を払ってる。奥さんも娘も息子も亡くした。だから、静かにしてろ」と諌める。軍曹は、そのあと、ピーターの隣のベッドに座ると、「用があったら、ガラガラ鳴らせ」と言い(1枚目の写真、矢印は紐と缶)、そのままベッドに横になる。一方、アナは、大尉の部屋に連れて行かれ、ちゃんとしたベッドに座らされるが、大尉は、そのあと、無言で隣の部屋に行き、簡易ベッドに寝てしまう(2枚目の写真、矢印は大尉)。紳士的な大尉は、アナを守るために、「俺のもの」と宣言しただけだった。兵士の部屋にいるピーターの方は、雑談がちっともやまないので、枕の中に頭を突っ込んで眠る。一方、男爵夫人は、No.1の女中に、「あの子には、この家の “大黒柱” だと言ってきた」という。女中が、「一人きりの男性ですよ」と言うと、「でも、男じゃない」と、過大な責任を負わせてしまったことを後悔する(3枚目の写真)。
  

翌朝、城館から双眼鏡で覗くと、昨夜までいたドイツ兵の姿が消えている。3人の兵士は、ピーターを連れて魚獲りに出かける。手榴弾を海に投げ込み、死んだ魚をピーターに拾わせるという残酷な方法だ。ピーターは、「やりたくない」というが、無理にパンツだけの裸にさせられる(1枚目の写真、矢印は爆発した手榴弾で上がる水煙)。ピーターは、魚を入れる袋を持って海に入って行く。そして、死んでプカプカ浮いている魚を取っては袋に入れる(3枚目の写真、矢印は魚)。その間、城館では、大尉が占有している部屋に物を取りにきた男爵夫人との間で、短い会話が交わされる。夫人:「あなた、出身は?」。大尉:「あんたと同じレニングラード」。「私はサンクト・ペテルブルグですよ」〔革命以前の名称に拘っている〕。「それで?」。「フォンタンカ川沿いよ」〔帝政時代の中核部〕。「私は、ネフスキー大通り」〔市のメインストリート〕。「サンクト・ペテルブルグは、今、どうなっているかしら?」。「廃墟だ」〔ドイツ軍によるレニングラード包囲戦の結果〕。「ベルリンやドレスデンやハンブルクみたいね」〔こちらは連合国軍の爆撃〕。「我々を批判するのか?」〔レニングラードの廃墟化にソ連の直接責任はない〕。「いいえ。でも、あなたの大義には従いませんよ。革命で、父はあなた方と戦い亡くなった。犠牲者として」。
  

大尉は、夫人との会話でイライラすると、海に向かう。すると、爆発の音が聞こえてくる。これは、大尉には意外だったようで、何事かと走り出す。そこで、場面は再びピーターに。兵士達は、ピーターの移動距離を減らすためか、手榴弾をかなり至近距離に投げる(1枚目の写真、矢印)。これは、結構恐ろしいし、その回数も半端ではないので、ピーターは次第にくたびれてくる。そして、ピーターのすぐ後ろで爆発した時、突然、意識が朦朧となる。その時、海岸に現われた大尉は、「何をやっとる?」と詰問する。「魚を獲ってます」「ガキを鍛えないと」。今や、水面から見えるのはピーターの頭だけ。「出してやれ」。「泳げません」〔歩いて入れる深さなのに、何という言い草〕。溺れる寸前のピーターを救ったのは、「お前ら、どうかしてるぞ!」と言って、軍服のまま海に入っていった大尉だった(2枚目の写真)。大尉はピーターを抱えて岸まで上がると、そのまま海岸のコンクリート・ブロックの上に座らせる。そして、ピーターが愛用しているドイツ軍の軍服の上着をかけてやる。気の強いピーターは、「僕、あなたの兵隊を撃ちましたよ」とワザと言う。「残念ながら、当たりませんでしたけど」。兵士が、「じゃあ、どうやって短機関銃に弾を込めたか言ってみろ」と笑うと、「とにかく撃ったんです」と反論。それを聞いた大尉は、「君は、私の息子が12だった頃を思い出させる」と言いながら、海に入って濡れた自分の軍服の上着を手で絞る(3枚目の写真)。一行は、城館に戻る途中で、1頭の乳牛を連れたドイツ軍の中佐の小隊と遭遇する。ドイツ兵は15名ほどいたが、中佐が止めたので撃ち合いにはならなかった。
  

城館に戻った兵士達は、その他の兵士達を含め、汚れに汚れた軍服を洗ってもらう〔男爵夫人からの申し出~悪臭が我慢できなかった?〕。大尉は、軍服を着たままのピーターをテーブルの上に立たせると、「そんな姿でいるのを我々に見つかると、捕虜収容所行きだぞ」と言い(1枚目の写真)、軍服を脱がせる。ピーターは、「放してよ!」と反抗するが、軍曹に手伝わせ、「子供なら、子供らしくしないとな」言い、ピーターが元々はいていた長ズボンをハサミで切り(2枚目の写真、矢印)、半ズボンにする。普通の半袖シャツと半ズボンだけにされたピーターは、大尉が好意でやったことなのに、気に食わなくて頭に来る。窓辺に立つと、カーテンを思い切り引っ張ったり、壁を蹴ったりする(3枚目の写真、矢印は短く切られたズボン)。
  

城館から双眼鏡で覗くと、海岸にはドイツ兵がまた戻ってきている〔結局、他の海岸から逃げられなかった〕。中庭では、洗った軍服が干され、ピーターが獲ってきた魚が焚き火で焼かれている。城館の中にあるグランドピアノの前には通信係の兵士が座り、タバコをくわえながら弾いている。階段を降りてきたアナは、降り切ったところで足を止めて聴き入る。部屋に入って来たピーターは、それを見て、「ここで何してるの?」と訊く。「“レ” の音がすごくきれい。そう伝えて」。嫉妬したピーターは、「『すごく下手ね』って言ってる」と伝える(1枚目の写真)。「チャイコフスキーの変奏曲。調子外れのピアノのためのね」〔下手に聞こえるのは、ピアノのせいだと言いたい〕。「『有名な音楽家なのか?』って訊いてみて」。「『ロシアの音楽家は、みんなそんなに下手なのか?』って」。「ほんとにそう言ったのか?」。「うん」。「俺だけだ。音楽院で学んでた。戦争の前だ。だが、どのみち追い出されたろう。下手だったから」。「『下手だった』って」。「すごく上手だと思うわ」(2枚目の写真)。「ドイツ人の作品も弾けるよ」。「行こうよ」。「好きなようにするわ」。「僕が必要だろ」。「今はいい。遊んでらっしゃい」。「シューマン、マーラー、ブラームス」。ピーターは、悲しくなって部屋から飛び出て行く。「シューマンを弾くよ。彼の曲は好きだけど、彼の国は大嫌いだ」。自分の部屋に戻ったピーターは、ベッドにうつ伏せになって泣く(3枚目の写真)。その頃、中庭では、大尉の指示で、ピーターが着ていた軍服が焚き火で燃やされている。「ドイツの軍服はよく燃えるな。俺達のとは大違いだ」。
  

それを見たピーターは、かろうじて奪われずに済んだ軍帽を握りしめ、城館から飛び出して行く(1枚目の写真)。そして、ドイツ軍の野営地に行き、軍帽をかぶって中佐の前に行く。「大砲は壊れているし、弾薬はありません」。「その言葉、なぜ信用できる?」。「どうか、信じて下さい」。「昨夜、光の信号を送ったのは、君か?」。ピーターは頷く。「奴らは、何を目論んでる」(2枚目の写真、矢印は後生大事にしている軍帽)。「大尉は援軍を求めましたが、断られました。8人しかいません。うち1人は負傷者です。だから、あたなは…」。「大尉は、どんな人間だ?」。「ドラゴンって呼ばれています。なぜかは知りません。兵隊たちは、大尉は自分たちを見捨てないと言っています」。「戦争はもう終わった。そのことは彼もわきまえているはずだ。子供達は?」。「僕、あなた方を助けることができます、中佐殿。いつ攻撃されるか教えていただければ、僕は、子供たちを安全に連れて来られます」(3枚目の写真)。「重要な伝言だった。よくやった。君に知らせよう」。ピーターは敬礼し、それに中佐も応える。「捕まるなよ」。ピーターが去ると、中佐は、後ろで聞いていた中尉に、「船に来るよう伝えろ」と命じる。大砲が使えないと分かったので、逃げることができるからだ。
  

夕方になり、デンマークから小型船がやってくる。双眼鏡でそれを見た大尉は、「あの船、どこから来たんだ? ちゃんと見張ってなかったのか?」と驚く(1枚目の写真、矢印)。「奴らにも斥候はいます」「司令部がああなんだから、行かせちゃいましょう」。だが、大尉の決意は固い。「我々に対する命令は、逃走を防ぎ、捕虜にすることだ。2人で船に細工をする。人選は私がする」。2人の泳ぐことのできる兵士が、夕暮れの闇に紛れて海に入り、船まで泳ぎ、何か細工をして戻ってくる。2人が岸に上がり、しばらくすると、小型船のエンジンがポンと変な音を立てて停まる。がっかりしたピーターが、食卓のテーブルに両肘を付いていると(2枚目の写真)、いきなり背後から大尉の声がする。「奴らは、なぜ君を助けん? なぜ、何もしない?」。ピーターが黙っていると、「『訊かれたら すぐ答えろ』、と言っただろ」と言われる。「答えが分からなくても?」(3枚目の写真)〔ピーターにしてみれば、中佐から連絡もないし、攻撃してくる気配もない。その上、黙って出て行こうとして失敗した。答えなど分かるはずがない〕
  

「私が君の立場にいたら、何をするだろうと考えてみた。敵には攻撃能力がないと知らせたのは、勇敢だったな。ところが、80対8なのに 奴らは何もせん」。「腰抜けなんです」。「生き残りたいからか?」。「戦いたくないからです」。大尉は、拳銃の撃鉄を起こし、「私は敵だ。殺せ」と、ピーターに渡そうとする(1枚目の写真、矢印)。「殺せ。海岸の奴らは腰抜けだ。君はそうじゃない。殺せ」。しかし、ピーターは首を横に振り、顔を背ける。そのあと、ピーターは、「戦争のこと、話してもらえます?」と尋ねる。「何が知りたい?」。「何もかも」。「例えば?」。「あなたの一番の偉業は、何ですか?」。「私は、レニングラードで教師をしていた。私のクラスにセリョーシャという少年がいた。ひ弱で内気だった」(2枚目の写真)「彼は母親に似て、読書が好きだった。戦争が始まると、その本の虫は兵士になりたいと言い出した。彼の父親は 笑った。しかし、医者になることを夢見ていたセリョーシャは兵士になった。そして、二度目の戦闘で戦死した。もし、医者になっていれば、大勢の人を救って英雄になれたかもしれないのに。今は何だ? 死んだ英雄か?」。ピーターは、「息子さんなんでしょ」と言う(3枚目の写真)。「息子さん… 戦死しちゃったんだ」。「父親には、息子の運命を変えられない。彼らは、自分達で決めてしまう」。大尉とピーターの心が一番接近した瞬間だ。大尉にとっては、ピーターは2人目の息子のようなもので、大尉が「彼ら」と複数形を使ったのは、ピーターもまた、自分の意志に反して危険な行動に出ようとしていること揶揄している。ピーターも、大尉の中に、父親の面影を見たのだろう。
  

翌日、納屋の中2階でピーターが、屋根から漏れる光で遊んでいる。この厳しい戦争映画の中で、一番幻想的で美しいシーンだ(1枚目の写真)。そのあと、ピーターは鳥の巣から小さな卵を取り出して見ている(2枚目の写真、矢印、右にあるのが巣)。すると、アナが梯子を登ってきて、「泳ぎに行かない?」と誘う〔しかし、撮影場所のリューゲン島の5月初旬の気温は最低7℃、最高17℃。泳ぐどころか、裸になるのすら寒い。前の日、ピーターが魚を獲らせられた時も、恐らく低体温症になったのであろう〕。しかし、2人は楽しそうに出かける(3枚目の写真)。2人の服装は、戸外でも半袖のままなので、如何にも泳ぐのは問題なさそうだが、まだ午前も早い段階なので、気温は10℃ちょっとというところだ。
  

2人は海岸に行くと、そこには、昨日の夕方遅くに一杯いたドイツ兵の姿は影も形もない。そこで、お互い背中を向き合って服を脱ぐ。ただし、ピーターはパンツ、アナはシュミーズ姿で、節操は守っている。アナは、昨日のことがあったので、「私のこと、まだ好き?」と尋ねる。ピーターは何も言わない。ピーターが まだ機嫌を損ねていると思ったアナは、ピーターの手を取り、乳房と乳房の間に当てる(1枚目の写真)。そして、いきなり海に向かって走り出す。その時、本当に泳いだのかどうかは分からない。次のシーンで、2人は、海岸の草むらの中に、さっきと同じ服装で(節操を守り)、少し離れて横になっている。アナ:「あのピアニスト、どんな人かしら?」。ピーターにとっては、最も相応しくない話題だ。「何で 僕が知ってるんだ。ボリシェヴィキ〔レーニンが率いた左派〕だろ」。「音楽家よ」。「耳や鼻に毛が生えてる兵士じゃないか」(2枚目の写真、2人は裸のように見えるが、パンツとシュミーズははいている。ピーターは、草の穂(矢印)でアナの顔を触る)。「あいつに、何を期待してるんだ?」。「彼は男よ。あなたは違う」。ピーターは傷付き、アナに背を向ける。2人が、しばらくそこで横になっていると、ドイツ軍の中尉が部下と一緒に来て声をかける。「おい、坊主。昨夜は何だったんだ?」。2人は、急いで脱いだ服をかき集め、裸の体を隠す。「船が壊された。何で警告しなかった? なぜ、黙ってた?」。この赤軍の作戦は、ピーターも知らなかったので、これはとんだ言いがかりだ。だから、逆に、中佐の約束不履行を責める。「なんで、攻撃しなかったの?」(3枚目の写真)。中尉は、「失せろ。消えちまえ」と2人を追い払う。その後、海岸に再び集まったドイツ兵は、昨日破壊された小型船の部品を修理する。
  

双眼鏡でドイツ兵の動きを監視しているところに登っていったピーターは、兵士の1人に、「誰が首を切ったの?」と尋ねる。「誰の首だ?」。「ドラゴン」(1・2枚目の写真)。「ドラゴンは正直で寛大な人だ。そういう人は、敵をつくるものだ。戦争の初め、彼は小隊長だった。敵に囲まれ そこを突破したのに、懲罰部隊〔軍規違反者の部隊で、危険な任務に当たった〕に送られた。少佐の時には、連隊長と言い争いなった。連隊長は酔っ払っていて、彼は、部下を守ったんだ。軍曹と俺はそこにいた。それで、また、懲罰部隊だ。彼はそこで怪我をし、文字通り、血で贖(あがな)ったんだ」。その時、窓の外を見た軍曹が、「通信係を見てみろ。奴は、時間を無駄にせん」。その言葉で、ピーターも窓辺に行く。そこからは、アナがピアニストと親しげにしている姿が見えた(3枚目の写真、矢印は通信係=ピアニスト)。
  

ピーターは、すぐに納屋に行く(1枚目の写真)。梯子を登ると(2枚目の写真)、そこでは2人が立ったまま向き合い、キスしていた。ピーターは、持っていた石を床に向かって投げつける。そして、当然、大尉に訴えたのであろう。次のシーンは、大尉による聴聞会。大尉:「お前は、我が軍における強姦の処罰を知っているか?」。通信係:「強姦ではありません」。「そんなことは訊いとらん。軍は、強姦者をどう扱か知っているか?」。「知っています。よろしいでしょうか?」。「話せ」。「彼女に訊いて下さい。私は彼女を愛しています」(3枚目の写真)。「軍法会議で釈明するがいい。判決が出るまでの間、お前を拘留する」。「お願いです。彼女に訊いて下さい」。「お前は、命令に反して持ち場を離れた」。通信係は武装解除され、地下にしつらえられた臨時の監獄に連れて行かれる。
  

ピーターが食堂で1人で食べていると、それをアナが無言で見つめている(睨んでいるに近い)。ピーターは平気で平らげ、女中頭に「パン、もっともらえる?」と訊く。そこに、足音荒く入って来たのは男爵夫人。ピーターに対し、「お話があります。今すぐ!」と、強い調子で言う。ピーターは、「今、食事中です」と意に介さない。「大尉に会って、すべきことをなさい。彼女から聞きましたよ。彼とは自発的に会っていたとか。それはそれで悪いことだけど」。「何か言いたければ、ご自分で大尉に会われたらどうです?」(1枚目の写真)。ピーターがこんなに反抗的だとは思わなかった夫人は、食事を中断させ、「部屋にお行き」と命じる。ピーターは皿を持って立ち上がると、女中頭に向かって皿を差し出し、彼女が受け取らずに背を向けると、そのまま床に落す〔金属の皿なので割れはしない〕。アナは、一使用人の分際で、男爵夫人とその甥を喧嘩状態に追いやったことで〔そもそも、敵の兵士と恋に落ちること自体、夫人にとってはふしだらで許せない行為〕、こうべを垂れて恥じる。悲しくなったピーターは、壊れた大砲の上に座り、石を投げて鬱憤を晴らしている(2枚目の写真)。そこに近づいてきたのが大尉。「君はどう思う… ドイツ兵は降伏するか?」と訊く。ピーターは振り返りもせず、肩をすくめる。大尉はナイフを渡し、「いつ、郵便が再開されるか分からんぞ」と言う(3枚目の写真、矢印はナイフ)。ピーターは、「彼を縛り首にしないで」とドイツ語で言う。「何だ?」。今度は、ロシア語で同じ言葉をくり返す。「彼女は、自発的に会ってた。あの尻軽め!」。そう言うと、また石を思い切り投げる。
  

そして、翌朝、一斉に鐘が鳴らされ、対岸のドイツ本土でも、お祝いに銃を乱射したり、大砲を撃つ音〔花火かもしれない〕が聞こえてくる。ラジオの英語放送は、アイゼンハワー元帥の本営で、ドイツ側のヨードル上級大将とデーニッツ海軍元帥が無条件降伏文書に署名したと告げる。城館の子供達やピーター、赤軍の兵士達もその放送を聞いている(1・2枚目の写真)〔英語が理解できたとは思えないのだが…/ピーターにとっては、悔しいの一語〕。城館の中の赤軍兵士も、銃を空に向けて撃って喜びを現わす。中庭に一列に並んだ5人〔1人は負傷、1人は監獄〕に対し、大尉は1人ずつ感謝の言葉を述べ、抱擁するが、反抗的なセデフに対しては何もしない。両者の軋轢は決定的だ。中庭にはテーブルが持ち出され、そこで、全員が集まってお祝いの食事会が催される(3枚目の写真)。通信係は食事には参加しないが、監獄から出されてピアノを演奏する。そして、食事が終わると、兵士の1人が、写真を撮ろうと言い出す。「同志、この 待ちに待った日は、すぐ終わり、二度とない。この瞬間を 大事にしたい。写真を撮るぞ」。「カメラなんか ないじゃないか」。兵士は、手に握ったレンガを見せて、「これがカメラだ。いつも これで写真を撮る」と言い、「撮ったら、ここと、ここに記憶する」と、頭と胸を指す。ピーターを加えた8人がポーズを取るが、レンガを載せた松葉杖が倒れ、全員が大笑い。いい思い出ができた。
  

すべてが終わり、大尉がテーブルに座ってタバコをふかしていると、そこに少佐のジープが入ってくる。少佐は、もう酔っ払っている。大尉:「ドイツ軍は、まだ海岸にいます」。少佐:「構わん。飲んでいいか?」。そう言うと、残っていた蒸留酒を小さなコップに注ぐ。「少佐、戦車はどこです? この3日間、何度も通信を試みたのですが」。「戦争は終わったんだ」。そう言うと、「勝利に」と言って、副官と乾杯する(1枚目の写真、矢印は少佐)。城館の中に場所を移して祝賀会が続いていたが、その音楽を聴きつけた少佐が 勝手に中に入って行く。そして、アナに目を留めると、「ご紹介賜りたいな」と笑顔で話しかける。大尉は、「別な時に」と言うが、少佐は、「今だ」とつっぱねる。大尉は、「子供達を部屋に戻して」とお手伝いに言うが、それを聞いた少佐は、「君は、ドイツ人と友達になったようだな。目標を失って怖くないのか、大尉?」と絡む。大尉は、すぐ、「ドイツ兵を、捕まえましょう」と提案するが、「話を逸らすな。島じゅう 婆あばかりなのに、こんな居心地のいい場所にいるとはな。上官にも、分け前を寄こせ」。大尉は、アナとの間に割り込んで庇う(2枚目の写真、矢印はアナ)〔アナはトラブルメーカーだ〕。「少佐、あなたは酔っている」。アナは逃げて行く。「だから?」。「お眠りなさい。明日、話し合いましょう」。「俺に、そんな口を聞くな、大尉」。そう言うと、このロクデナシは、自分の副官に、「あの短髪をここに連れて来い。直ちにだ!」と命じる。大尉は、「通信係、本部に、問題が生じたと連絡しろ」と命じる。ロクデナシは、「問題だと? それなら、すぐ貴様に降りかかる」と言うと、室内なのに、天井に向かって銃を撃つ。そして、アナが向かった2階に階段を上がろうとする。自分よりずっと年下の、下らないバカが、最低の行為に走るのを見て、我慢の限界を超えた大尉は、ロクデナシの襟をつかむと、そのまま壁に叩きつける(3枚目の写真、矢印は少佐)。これは、相手が如何にロクデナシでも、軍規を完全に無視した行為だ。激怒した少佐は、大尉に唾を吐きかける。それを見たセデフは、「これで、3度目の首切りだな」と呟く。ロクデナシは、すぐにジープで立ち去る。
  

大尉が見ていると、ジープは城館に通じる道の出口で停車し、そこで降りたロクデナシは、兵士を乗せたトラックを停めている。大尉は、2階の窓から見ているピーターに、「海岸にいる君の友人に、これから子供達と女性を送ると伝えてくれ」と頼む(1枚目の写真)。ピーターは、すぐに海岸に走って行く。ロクデナシは、自軍の兵士達に、同じ赤軍の仲間を攻撃させる準備を進めている。これは、反乱軍の制圧という口実を設ければ、軍規上問題はないのかもしれない。その証拠に、ロクデナシは、何も知らない兵士達に、「離反者どもに、赤軍の力を見せつけてやれ!」と命じている(2枚目の写真)。この愚かな行為を止めるとしたら、すべてを知っている副官だが、そんな危険な行為はしない。大尉は、城館から、「私は、赤軍の大尉だ。7人の赤軍の兵士と一緒だ。我々は偵察隊だ」と大声で呼びかける。相手側に仲間がいる軍曹も、「気でも狂ったか? 我々と戦うつもりか? 俺達の任務は館の監視だ。いるのは、女と子供達だ!」と叫ぶ。しかし、距離は離れているし、大勢の軍人が右往左往する騒音にかき消されて、恐らく聞こえてはいないだろう。子供達は、地下室に避難させられる。通路を城館に向かって進む兵士達は、標的にならないよう、木の影に散開する。大尉は、「機関銃を」と、本格的な応戦を決意する。「本気ですか?」。「抑止用だ」。そして、7人の兵士に向かって、「君達に命令を下すことはできん。どうするかは自分達で決めろ。出て行きたい者は、自由にしていい」と、心の広さを見せる。大尉のことが嫌いなセデフは、すぐに出て行くことにするが、追随者はいない。その頃、ピーターは、昨日までドイツ兵のいた場所に行くが、そこには誰もいない。セデフは、すべての武器を残し、両手を上げて城館から出て行く。ロクデナシの軍は、そんなことで容赦はしないので、直ちに射殺される。それを合図に、ロクデナシ軍が城館に向かって一斉に射撃を始める。大尉は、機関銃を頭上に撃って警告する(3枚目の写真)〔それでも攻撃はやめないときは、当然、交戦に使ったのであろう〕
  

ピーターは、海岸も行ってみるが、そこにもドイツ軍の姿はない(1枚目の写真)。戦闘は膠着状態で、7人の中で撃たれて死亡する者も出る。ピーターが、捜して走っていると、突然中佐が現れる。「あっちで何が起きてる?」。「ロシア軍が、僕たちを襲ってます。少佐は、大尉に復讐する気です。助けて下さい」。そこに、中尉がやってくる。「坊主、誰が戦ってる?」。「武装したロシア軍が、味方を攻撃しています」。中佐:「子供達は館の中か?」。「お願い、助けて。いっぱい兵隊さんいるでしょ!」(2枚目の写真)。同士討ちの戦闘では、機関銃の威力の方が上なので、ロクデナシは、「中尉、すぐに戦車を呼べ」と命じる。大尉が反対側の窓を見ると、ドイツ兵達がこちらに向かってくるのが見える(3枚目の写真、矢印はピーター、その左が中佐)。
  

大尉は、何事かと思い、急いで外に出て行く。「なぜ、ここに来た?」。中佐が敬礼する(1枚目の写真)。ピーターが、「一緒に戦ってくれます」と説明する。中佐は、大尉に近づくと、「敵は何人だ?」と尋ねる。ピーターが通訳する。その頃、城館への道を戦車が1台向かっていた(2枚目の写真)。そして、いきなり、窓が吹き飛ぶ。誰にでも、容易ならぬ事態だと分かる。大尉は、敬礼して謝意を示すと、ピーターを部下に命じて地下室に連れて行かせる。そして、中佐と一緒に城館に向かう〔通訳なしでは意志の疎通は難しい。個々で戦うしかないであろう〕。ピーターは、「出してよ!」と何度も頼むが、兵士は、「悪いな。お前のためなんだ」と言って、少し前まで通信係が閉じ込められていた監獄にピーターを入れる。ピーターは、木の檻の隙間から、再度、「出してよ! 出してってば!!」と叫ぶ(3枚目の写真)。「生き残れよ、ピーター」。
  

その後の戦闘のシーンは映されない。映されるのは、ピーターの地下室に、戦車の砲撃によって天井から破片が落ちてくる様子(1枚目の写真)や、通信係が残していったネズミを、ピーターが手の平に乗せて庇おうとする姿だけだ(2枚目の写真、矢印)。砲撃がやみ、地下に降りてくる足音が聞こえる。現われたのは、ドイツ兵。扉を開け、「来い!」と呼ぶ。ピーターが動こうとしないと、中に入ってきて、「ロシア軍が戻ってくる前に、ここから出て行け!」と、無理矢理引っ張り出される。中庭に出たピーターが見たものは、方々に死体の転がった惨状だった。辺りには、砲煙がたなびいている(3枚目の写真)。
  

中佐は、額を打ち抜かれて死亡していた(1枚目の写真)。戦争が終わり、生き残るためのデンマーク行きも、ロクデナシが起こした下らない戦争のため、永久に叶わなくなった。その先には、破壊された赤軍の戦車があり、その脇には、軍曹が死んで横たわり、その横に大尉が立っている。しかし、胸の下、脇腹の上の辺りを手で押えているので、肝臓を撃たれたのかもしれない。ピーターが前を通ると、大尉はじっとピーターを見つめる(2枚目の写真、矢印)。あたかも、2人目の息子を死なずに済ませたことを誇りに思うように。孤児のピーターは、2人目の父も もうすぐ失うと悟る(3枚目の写真)。だから、その場を立ち去りなくて動こうとしないのを、生き残ったドイツ軍の中尉に引っ張られてボートに向かう。
  

桟橋では、通信係と中尉が協力して、城館の少女達と女性達をボートに乗せている。そして、もやい綱が外される(1枚目の写真)。大型の手漕ぎボートは出発し、ピーターは振り返って中尉を見る(2枚目の写真、矢印)。この先に、映画の冒頭の2枚の写真がぴったり入る。3枚目の写真は、ボートがデンマークまで送る小型船に接近したところ。最後まで見送っているのは、通信係。アナとピアニストの短い恋もこれで永久に終わる。城館に残ったロシア兵とドイツ兵は、増強したロクデナシ軍によって殲滅させられるであろう。映画は、ここで終る。暗転して、すぐに表示されるのは、左側に「Pavel Wenzel」、右側に「Aleksey Guskov」。ピーターと大尉がともに主役であることを示している。
  

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